坂口昭子、恐れを知らぬピアノコンサート報告
3/26(土)大阪市東住吉区の蕎麦処「壱六庵」にて、吉山輝(ひかる)門下生によるピアノコンサートが開催された。招きを受けて、私たち夫婦も参加した。
「壱六庵」の戸を開けると、直ぐに目があったのがピアノを調律中の吉山先生。音楽家らしいさわやかな雰囲気をお持ちだ。それにしても、蕎麦屋のそれほど広くはないスペースに、どんとグランドピアノをおいているのは、この店の女将の音楽趣味らしい。当然、テーブルはピアノの間近に並ぶことになる。
昔、新婚旅行でアイルランドを旅した時を思い出した。かの地では、至る所のパブでギネスを呑みながら、楽器の演奏を楽しむ。演奏者をステージの上に置くのではなく、息づかいが聞こえそうな間近で音楽を楽しむ。いいものだ。
参加者は27名。午後4時、子供たちの演奏がはじまった。
最初は小学一年生の女の子。曲目は、クレメンティーのソナチネ。弾き始めると、いやあ、驚いた。こんな小さな子が、よくもこんなに弾けるものだ。そのこの素質もさることながら、よっぽど先生の教授法がよいのだろう。
子供達の演奏があると聞いていたので、家内は、きらきら星やバイエル程度のことかと思っていたらしいが、私たちの思いは見事に裏切られた。レベルが高いのだ。
5時過ぎ、坂口昭子女史とニコール女史が会場に到着。出番を待つ。
5時半、いよいよ坂口女史の出番となった。演目は「シューベルト・楽興の時」および「ラヴェル・亡き王女の為のパヴァーヌ」だ。
ちなみに、「楽興の時」は英語では、というか、何語か分からんが、Moments Musicauxであり、「亡き王女の為のパヴァーヌ」はフランス語の原題を Pavane pour une infante défunte という。「パヴァーヌ」とは、16世紀から17世紀にかけてヨーロッパの宮廷で普及していた舞踏のことである。
吉山先生の演目と演者の紹介を受けて、彼女はピアノの前へ出た。そして、吉山先生にこうつぶやいた。
「あのー、先生、シューベルトはやめようと思うんですけど・・・。」
ドッヒャーッ!
あのね、坂口さん、コンサートのプログラムに、あなたのお名前と演目がちゃんと記載されているんですけど・・・。私は、その時、坂口女史のメールの文中にある、4文字の言葉を思い出した。
恐れを知らぬ大阪の●●●●
エコリンのボス坂口のイメージをおとしめたくないと願う私から、●●●●を口に出すのは控えるとして、坂口女史自身のメールの一文をここに引用するので、読者が勝手に想像してほしい。
素人のおばはんの演奏はたぶん私だけだと思いますので、・・・・
●●●●の言葉を吉山先生が受け入れられる訳もなく、結局、弾きなさいということで、彼女はやむなくピアノの前に座った。そして、弾き始めた。
なんだ、結構弾けるじゃないか。結局、予定の2曲を見事に弾き終えた。
思うに、坂口女史は、完璧を目指す性質(たち)なのであろうか。私が聴く分には、十分にお上手であると思うのだが、彼女にしては不足を感ずるのであろう。それ故、直前の●●●●ぶりになったのであろう。
しかし、どうせ●●●●ぶりを発揮するなら、ええい、完璧でなくても弾いてやるという方向で、●●●●ぶりを発揮して戴きたいと思ったことである。
生徒の演奏が終わって、最後の〆は、吉山先生夫妻の連弾による「ボレロ」。さすがに見事だ。
すべての演奏が終わって、坂口・ニコール両女史と私たち夫婦はカウンターに並んで会食歓談した。家内が花束をもって行こうかしらと言うのを、押しとどめて、私は一升瓶の日本酒を彼女に贈呈した。エコーリンガル近くの「磯田屋酒店」で調達した「ひょうたんからコマ」という酒だ。なんとニコール女史も花束ではなくワインを贈呈した。やっぱりねえ・・・。●●●●に花束なんか、いるかっ!
それにしても、音楽を楽しむ人たちは、実に明るい響きを出している。また、高速道路の直ぐ下にある蕎麦処「壱六庵」でグランドピアノとは、大阪庶民の文化レベルもなかなか大したものだ。
「壱六庵」は、平野区の隣、東住吉区にあるのだが、エコーリンガルのある平野区にも、町人文化の伝統があり、それを保存する人たちもいる。いずれ、記事にしてみたい。
こうして、午後10時、両女史と別れて私たち夫婦も帰途についた。
一升瓶とワインを抱えた●●●●坂口の夜は、まだまだ続くのであろう。
昌原容成